バブルの死角 日本人が損するカラクリ岩本 沙弓氏 

フーチ 70%
製造業主導から金融帝国へとシフトしたアメリ
実際、一九九○年代以降、アメリカは国際資本の自由化を推し進めることで金融帝国を築き上げ、強いドル政策を採用する時期に海外から資金を集めるという戦略にシフトした。
たとえばITバブル期には全米に光ファイバー網を築く、あるいは住宅バブル期には水道管やガス管、道路などの強いインフラを整える、といったことをおこなうと同時に、資金を海外投資にも振り分けて高いリターンを得てきた。
 こうした金融立国を目指す戦略の陰で、製造業の切り捨てがおこなわれてきた。つまるところ、国の付加価値税の導入に反対し続けてきたことは、一大金融帝国を築くための布石だったのかもしれない。

 アメリカの場合、中間層は「没落」ところか「消滅」しかかっているとさえ言えるかもしれない。そして日本でも、景気停滞と物価上昇が同時に起きるスタグフレーションの恐れはもちろんのこと、中間層が没落するスクリューフレーションが進行しつつある。

 昨今の円安で灯油やガソリンの価格が急騰したのは周知のとおりだ。また、有名食品メーカーが、主力のマグロの缶詰について最大六・一%の値上げをするといったニュースが伝わってくる。詳しく見ると、二○一三年六月一日出荷分から容量を八○グラムから七○グラムに減らし価格は据え置くという商品もある。これでは六・一%どころか、実質一二・五%値上げしたことに相当する。所得が上昇しないなかで日用品が一○%以上の値上げとなれば、所得の低い層から打撃を受けるのは想像にたるであろう。

        中間層こそが経済の柱 

 今後心配されるグローバルなバブルオ生成と崩壊、その後にやってくる市場最悪の恐慌の影響をできるかぎり避けるためには、雇用不安を払拭して中間層を復活させ、内需を強化していくほかに道はない。そして経済を回していくためのエネルギーや、自給自足も可能とするような食料を国内で確保する必要もあろう。

 中間層の没落が激しいアメリカとて、第二期オバマ政権の経済政策の最大のテーマは中間層の復活となっている。

 消費税増税や輸出還付金、国の借金へと変貌してしまう巨額の為替介入やアメリカ経済の穴埋めをするだけの米国債購入などは、いずれも内需拡大とは正反対のものである。

 強者へ渡ろうとしている資金は、こんな時代だからこそ、日本国の増強のための支出へと振り替えられるべきだろう。

 目先のバブル景気に浮かれるのではなく、おそらく二○一六年ごろを契機として以降に訪れるであろう最悪の世界恐慌に備えて、内需ニッポンをつくり上げる。
今がそのラストチャンスであり、それはわれわれ一人ひとりの考え方や選択にかかっている。

 日本には最高の人的資源があり、国富も豊富にある。人材、資金を国内で有効利用することさえできれば、たとえ恐慌に遭遇してもなお繁栄し続けていけるような、理想的な国家になれる可能性は十分残されているのである。