ミツバチの大量失踪が語ること福岡 伸一氏

 ネオニコチノイドという物質、タバコにも含まれる神経毒ニコチンの構造を改変し、害虫には卓効を示すが、人間にはほとんど害のない物質が開発されました。少量で効き目があり、効果が持続します。

 これはDDT問題と同じ構図です。少量で作用し、効果が持続するということは、それだけ環境中に残存し、中長期的な影響をもたらす可能性があるということです。

 2012年3月、科学誌「サイエンス」電子版に注目すべき論文が二つ掲載されました。

致死量以下であっても、ネオニコチノイドを与えられたハチは神経を侵され、巣に帰る能力に障害が出たり、女王バチの数が減少したりするとの内容でした。
 夏場、日本ではミツバチは花の蜜よりも、イネの花粉をエサとして集めます。

このとき、ネオニコチノイドを摂取してしまいます。養蜂家らは、の関連に気づいていました。
水田近くの巣箱で失踪が多発していたからです。ところが、早くからネオニコチノイドの危険性を憂慮し、禁止を決めたフランスに比べ、日本の行政の対応は驚くほど鈍いのです。

渦巻き模様は自然界の共通原理
 

夏の夜、虫たちは光に集まってきます。これは虫が光源に対して、一定の角度を保ちながら飛行する習性を持っている。その角度を維持しようとすると結局、どんどん光源に近づいていくことになり、結果的に螺旋を描きながら光源に吸い寄せられてしまいます。

虫が街灯などの周りをくるくる回っているのはそのためです(吸い寄せられたあげく街灯にぶつかっては、また同じことを繰り返しています)。

 虫の飛翔の軌跡を逆から見てみましょう。周回運動は外側に開きながら、螺旋を描いて広がっていきます。海辺に打ち寄せられた巻き貝を拾って上から眺めてみると、見事な螺旋模様を示していることがわかります。