腸内革命

 私たちは「頭の中にある脳」と「腸の中にある脳」という2種類の脳を体内に宿しています。「幸せ物質」とは、脳の中にあるセロトニンドーパミンといった神経伝達物質のことをいいます。

          ドーパミン

 神経伝達物質は百数十種類あるとされており、その中のドーパミンは2000年のノーベル賞で大きな注目を集めるようになりました。イギリスのカールソン博士が医学生理学賞を受賞したのです。ドーパミンは「幸せ物質を記憶する物質」であると広く知れ渡りました。ドーパミンは、人間の快感や快楽に作用しているのです。

 私たちが普段行っている仕事や勉強など、習慣として行動していますが、人間が習慣として行動するためには、そこに大きな「理由づけ」が必要となります。何が「理由付け」になっているかというと、意欲や向上心です。

また、仕事を続けることによって、金銭や周りからの尊敬も得られ、他人とコミュニケーションもとれたりします。このような様々な“報酬”が働く上で意欲の源泉になっているのです。

  これらの意欲は、「脳」いわゆるドーパミンによってコントロールされています。

ドーパミンは脳に歓喜や快楽、興奮といったメッセージを伝える働きがあります。

人間は働くことによって、歓喜や快楽、あるいはそれに似たような要素が得られるからこそ、私たちは毎日仕事に精を出すのです。その仕事の先に見据える夢や希望を実現させるためには、ドーパミンの働きがより一層強くなることが欠かせません。

            セロトニン

  ドーパミンがいわば“順風”の時に効果を発揮する物質ならば、セロトニンはいわば“逆境”の中で役立つ「幸せ物質」です。人は誰でも不遇な時や不運な時があります。

このような“逆境”の時に気持ちを奮い立たせ、やる気を起こしてくれるのがセロトニンなのです。いわば、不幸を蹴散らしてくれる「元気の素」ともいえ、貴重な「幸せ物質」です。

              セロトニンの働き心身のコンロトール…セロトニンが減少すると怒りやすくなる。
自律神経のコントロール…脳や体を覚醒させ、「やる気」を起こさせる。

         旬の食材

 昔から我が国では“旬のもの”を楽しむ習慣がありましたが、季節ごとの自然の恵みは、知らず知らずのうちに日本人の健康・長寿に大きな健康をもたらしてきたと考えられます。

  そしてそれらの食材は腸内細菌を活性化することで、セロトニンドーパミンという「幸せ物質」もたくさん脳に送り出していたのです。

「伝統的な日本食」を摂る人たちは、腸内細菌が豊富です。肉好き、ファーストフード好きという印象の強いアメリカ合衆国ですが、アメリカ人と日本人の一人当たりの野菜摂取量は、1995年からアメリカが上回り、この年のがんの死亡率も日米で逆転しました。

  アメリカは日本食への評価を高め、「昔、日本人が食べていた食生活を見習おう」という運動まで起きました。
今の日本人は、アメリカ人以上にアメリカ人的な食生活を送っているのかもしれません。
                   笑い
 笑うと脳が元気になります。人は面白くて楽しいから笑うのか、それとも笑うことで楽しくなるのかは断言出来かねますが、とにかく「幸せ物質」は笑うことで増えるのです。

本当に笑わなくても、無理してでも笑った顔をすると、脳は間違ってNK細胞を出すのです。

脳が体の司令塔という言い方がありますが、実は体の動きが脳を動かしている部分もあるのです。

 脳だけでなく「笑い」は腸内細菌を活発にさせます。何をするにもムスッとしているような顔をしていると、腸も不機嫌になって「幸せ物質」をつくらなくなります。

「腹を抱えて笑う」とはよく言ったもので、もともと笑いとお腹(腸)は深い関係にあったのかもしれません。
女性の方に多いと思いますが、笑いジワを気にして笑顔を忘れていると、年齢よりも老けこんで見えます。笑顔を絶やさない人は表情が若々しく、顔が華やいで見えるのです。

         腸内細菌

  ヒトの腸内には一人当たり100種類以上、100兆個以上の腸内細菌が生息しており、糞便のうち、約半分が腸内細菌またはその死骸であると言われている。宿主であるヒトや動物が摂取した栄養分の一部を利用して生活し、他の種類の腸内細菌との間で数のバランスを保ちながら、一種の生態系(腸内細菌叢、腸内常在微生物叢、腸内フローラ)を形成している。

腸内細菌の種類と数は、動物種や個体差、消化管の部位、年齢、食事の内容や体調によって違いが見られるが、その大部分は偏性嫌気性菌であり腸球菌など培養可能な種類は全体の一部であり、VNCの主涙も多数存在する。なお、その名称から腸内細菌の代表のように考えられている大腸菌は、全体の0.1%にも満たない。

  腸内環境は嫌気性であり、腸内細菌の99%以上が嫌気性生物である偏性嫌気性菌に属している。これらの腸内細菌の代謝反応は還元反応が主体であり、また種々の分解反応が特徴的となっている。嫌気呼吸の種類には、嫌気的解糖、硝酸塩呼吸、硫酸塩呼吸、炭酸塩呼吸などがあり、基質を還元することによって代謝に必要な電子を得ており、例えば、硝酸塩から亜硝酸塩を、硫酸塩から硫化水素を、炭酸からメタンを生成するような例がある。

  腸内細菌叢を構成している腸内細菌は、互いに共生しているだけでなく、宿主であるヒトや動物とも共生関係にある。宿主が摂取した食餌に含まれる栄養分を主な栄養源として発酵することで増殖し、同時にさまざまな代謝物を産生する。腸内細菌が発酵によって作り出したガスや悪臭成分がおならの一部になる。

腸内細菌は、草食動物やヒトのような雑食動物において食物繊維を構成する難分解性多糖類を短鎖脂肪酸に転換して宿主にエネルギー源を供給したり、外部から侵入した病原細菌が腸内で増殖するのを防止する感染防御の役割を果たすなど、宿主の恒常性維持に役立っている。

しかし、腸管以外の場所に感染した場合や、抗生物質の使用によって腸内細菌叢のバランスが崩れた場合には病気の原因にもなる。

  腸内細菌は多数の雑多な菌種によって構成され、一人のヒトの腸内には100種以上(一説には500種類とも言う)100兆個の腸内細菌が存在していると言われる。

一般にヒトの細胞数は60−70兆個程度と言われており、細胞の数ではそれに匹敵するだけの腸内細菌が存在することになる。ただし細菌の細胞は、ヒトの細胞に比べてはるかに小さいため、個体全体に占める重量比が宿主を上回ることはない。

しかし、それでも成人一人に存在する腸内細菌の重量は約1.5kgにのぼるとされる。腸管内容物を見ると、内容物1gに100億個から1000億個(1010−1011個)の腸内細菌が存在しており、糞便の約半分は腸内細菌か、またはその死骸によって構成されている。


  ヒトや動物が摂取した食餌は、口、食道、胃を経て、十二指腸などの小腸上部に到達し、その後、宿主に栄養分を吸収されながら、大腸、直腸へと送り出される。このため、消化管の場所によって、その内容物に含まれる栄養分には違いが生じる。

また消化管に送り込まれる酸素濃度が元々高くないのに加えて、腸管上部に生息する腸内細菌が呼吸することで酸素を消費するため、下部に進むほど腸管内の酸素濃度は低下し、大腸に至るころにはほとんど完全に嫌気性の環境になる。

  このように同じ宿主の腸管内でも、その部位によって栄養や酸素環境が異なるため、腸内細菌叢を構成する細菌の種類と比率は、その部位によって異なる。

一般に小腸の上部では腸内細菌の数は少なく、呼吸と発酵の両方を行う通性嫌気性菌の占める割合が高いが、下部に向かうにつれて細菌数が増加し、また同時に酸素のない環境に特化した偏性嫌気性菌が主流になる。