近年急増の炎症性腸疾患

 腸を中心に原因不明の炎症が起こり、下痢や出血、腹痛を起こす「炎症性腸疾患」(IBD)。十代から二十代での発症が多く、患者数が年々増えている。

 症状のよいときと悪いときを繰り返しながら、長い年月続くのが特徴で、家族や職場など周囲の理解も必要だ(砂本紅年)。
 「大変なのは人生の早い時期に始まり、一生抱えなければならないこと」と話すのは、IBDを専門とする大船中央病院(神奈川県鎌倉市)特別顧問の上野文昭医師(65)。闘病期が勉学や受験、就職など、ライフステージの不安定な時期に重なることを思いやる。

IBDは「潰瘍性大腸炎」と「クローン病」をまとめた総称。二つは違う病気だが、症状や経過で似ている点が多い。

  ともに何らかの原因による免疫異常の結果、腸粘膜に炎症が起きると考えられ、発症のピークは十、二十代。治療で症状がよいときは普通の生活が可能だが、悪くなると腹痛や下痢で一日に何度もトイレに駆け込んだり、入院治療を必要としたりする。安倍晋三首相も潰瘍性大腸炎に悩んだことがあった。