EVにもカンタン密着!

マグネシウム電池で車社会が変わる

世界にエネルギー革命を起こすかもしれない「マグネシウム電池」。東京工業大学の矢部孝教授が発明し、スマホなら1ヵ月は充電不要で使えるようになるといわれている。
矢部教授のマグネシウム電池事業化計画が特異なのは、その実現が近未来ではなく、数年以内に迫っていること。教授のロードマップはこうだ。

2015年に電車用と自動車用(大量生産版)の開発……。ちなみに、今年の「自動車用の開発」とは具体的にどんなことを行なっているのか?「今、EV(電気自動車)がはやりつつありますが、使い勝手は決してよくない。

そこで、携帯コンロのカセットボンベのように、マグネシウム電池をポンと自動車に装着する。それをガソリンスタンドやコンビニなどで売る。使い終わった電池もそこで回収する。目指すのはそんな車社会です。

将来的には、マグネシウム電池16キログラムで500キロメートル走行を実現します。電池代は約3800円。燃費10キロメートル/リットル、ガソリン代をリッター150円で計算すると普通車なら7500円なので、約半額です」

車だけではない。現在と同程度の性能なら、必要なマグネシウム電池は、ノートパソコンには2、3グラムと1円以下。オートバイは300キロメートル走行に約5キログラムで約1200円。ソーラーに代わる家庭用電気になら、自動車と同じ16キログラムで1ヵ月もつ計算だ。

なぜマグネシウム

Mgの資源量は海水中でナトリウムに次いで2番目に多く、地球の海水中に1800兆トンあると言われています。また、ゴビ砂漠アリゾナの砂漠には、かなりの量のMgが含まれています。埋蔵量を見ても、亜鉛の4億トン、アルミニウム150億トン、鉄8千億トンに比べて、桁違いに多いのです。

エネルギー貯蔵能力を考えると、単位体積当たりに発生できる熱量は液体水素の5倍であるので、コンパクトなエネルギー源でもあります。100万kWの発電所のわずか一日分の燃料を蓄えるためだけでも、1気圧水素だと、高さ10mで1km四方のタンクが必要ですが、Mgだと、高さ10mで15m四方と桁違いに小さいもので済みます(ここで、1気圧の水素としたのは、1気圧の圧力差では1平方mの面積に10トンの力がかかるため、大きなタンクでは気圧差をつけることができないので、大気圧で貯蔵するしかないからです)。

自動車の例で考えると、ガソリンスタンドは通常、車200台分のガソリン10m3程度を蓄えています。これを水素と置き換えると、何と、33,000m3のタンクが必要となり、日本中の地下に水素タンクを設置しなければならないでしょう。

Mgの重量当たりの反応熱(水素燃焼も含めて)は25MJ/kgであり、石炭30MJ/kgとほぼ同程度です。

現在の火力発電所の燃料をMgに替えることができれば、蒸気タービンで発電する現在の化石燃料の代わりに“リサイクル可能な石炭”としてMgを使うこともできるので、既存のシステムを継承することができます。また、Mgは引火の危険がないため、大量のエネルギー貯蔵には向いている物質です。