簡単に潰れるわけにはいかない

アメリカ帝国」が選ぶ道
副島 隆彦氏
フーチ 90%
 アメリカの財政危機は今、ものすごいことになっている。50兆ドル(5000兆円)にものぼる、巨額の財政赤字を抱えている。隠している赤字がいっぱいある。この他に50州と30の大都市の財政赤字もものすごい。だから金融政策と財政政策をいくらやっても、もうダメなんだ。すると何をやるかというと、「やぶれかぶれ」です。やぶれかぶれで戦争をする。

 そうすれば、軍産複合体が儲かる。大変なお金になります。戦闘機や爆撃機、戦車、戦艦、弾道ミサイルから核兵器にいたるまで、ものすごく建造費にお金がかかる。それでも戦争の準備のためとなれば、どんなにお金がかかってもそれらを造らなくてはいけないから、軍産産業にとっては大変な金儲けになります。
 日本ではIHI(旧・石川島播磨重工)と東芝川崎重工三菱重工が軍産産業の代表的な大企業で、大砲や戦闘機を造っています。アメリカの軍産産業は、日本の100倍くらいの規模でやっている。世界中の同盟国にも、旧式、新品をどんどん売っている。

それでも、今もレイセオンとかロッキード・マーチンとかジェネラル・ダイナミックス社とかの軍需企業の工場で造った兵器の在庫が、倉庫に山ほど積み上がってしまう。放っておけばすぐに在庫が山積みになる。

 そこで“在庫一掃セール”が必要になる。これらの在庫を消費先に売れば倉庫が空き、新しい技術を開発してまた新製品の生産ができる。それがアメリカが生き延びるための切実な国家目標だ。バカみたいだけれど、これが真実だ。

 これを戦争経済と言います。この言葉を、日本の知識人や学者たちは使いません。知らないんだ。私だけがもう10年もかけて日本に輸入している。アメリカやヨーロッパでは、頭のいい高校生もこの言葉を知っています。あなたの知人の欧米白人に聞いてごらんなさい。「ウォー・エコノミーって知っていますか。知っていたら教えてください」と。

   公共破壊事業を目指すアメリカの支配層

 アメリカでも日本でも景気が悪い時には公共事業をたくさんやります。今もそうだ。道路をほじくり返したり橋を造ったり、大きな山を崩して沼地を埋め立てたり。そうした事業を何千台ものトラックをガンガン使ってやるから、雇用が生まれて事業が成り立つ。昔はダムを作ったり橋を造ったり、いろいろな公共事業がありました。でも今は、もう日本国内はやることがなくなった。それらの補修しかない。

 それで、今度は「公共破壊事業」―これは私が作った言葉ですが、―をやろう、ということだ。それがアメリカの戦争経済です。「外国にまで出て行って巨大な破壊をする」という事業です。そこら中を爆撃して、人もたくさん死にますが、港湾から鉄道から都市から何から、片っ端から全部壊して。そして「また全部造り直せばいいだろう」というものです。

 彼らアメリカの支配者たちにとっては、それは大したことではない。排水量10万トンの空母を100隻作るよりも、この戦争=公共破壊事業をやった方が効率がいい。

 核兵器(核弾頭)はすでに1万発(ロシアも同じくらい持っている)ありますから。「在庫(宝)の持ち腐れ」で、使うこともできないで、ただ朽ち果てさせている。だから大破壊をして「造り直せば、立派なキレイな都市ができますよ。死んだ人たちは埋めてしまえばいいんです。500万人くらいどうってことはありませんよ」と。こういう考えだ。

 重要な人類減少が「余剰と過剰」です。ユニクロ一社がフル生産すれば、世界中で必要な量の服のすべてを作れるでしょう。すると他のメーカーや企業はいったいどうするのか。要らなくなってしまう。

だから、余剰=過剰が、人類を外側からぎゅうぎゅう締めつけている。在庫が山ほど、いやになるほど溜まっていて、どの企業もあらゆる業種がもがき苦しんでいるんです。