悪玉コレステロールは「悪者」ではなかった

 最新研究では総コレステロール250mg/dℓまで健康体といえる。血中コレステロールの基準についても、アメリカでは専門学会が13年に策定したガイドラインで、「血中コレステロールを下げても心血管疾患が治療・改善される根拠はない」と管理目標値を撤廃したのに対し、日本では動脈硬化学会がかつて用いていた「総コレステロール200mg/dℓ以上」を指導対象とする指標が多くの健康診断で今も使われている。

 日本では動脈硬化の原因となるLDLコレステロールが悪玉、逆にそれを防ぐHDLコレステロールが善玉とされてきた。

 そのため日本では、“悪玉”であるLDL値を下げることが重視される。健康診断では「120mg/dℓ未満」に抑えるよう指導され、「140mg/dℓ以上」は高LDLコレステロール血症と診断される。

 ところが、「LDL値は低いほどいい」とするこの基準とは正反対の調査結果がある。なんと実際には「LDL値が高いほど死亡率が低かった」のである。

 健康な人のLDL値の基準範囲は60代前半の男性で72〜183mg/dℓとなった。

        LDLは炎症を修復する

動脈硬化を起こした血管にコレステロールが付着していることが発見されたのは19世紀のことです。

それ以降、動脈硬化の原因だと考えられてきた。しかし、近年の研究によって実際には動脈硬化による炎症で傷ついた血管を修復するためにLDLコレステロールが集まってくるということがわかった。家事でたとえると、「現場に消防車があるから、火をつけたのは消防車」だと勘違いされたようなものです。

「たとえば、LDLの診断基準値が現在の120mg/dℓから人間ドック学会「新判定基準の上限まで緩和されると、“異常”と診断されるケースは成人の55%から5%に激減し、“病人”は3565万人から324万人へと、実に10分の1以下になります」。

そうした自体を病院や製薬企業は歓迎しない。基準が厳しいからこそ患者が増え、売り上げが伸びて業界が潤うからだ。