75歳から薬の飲み方を変えよう
秋下 雅弘氏

 なぜ、薬の数が多くなると、副作用が出やすくなるのでしょう。一つは、薬どうしが影響し合う「相互作用」のせいです。また、飲み忘れも多くなるので、服用が不規則になることも関係しています。

 もう一つは、高齢者は肝・腎機能が低いため、薬の成分を代謝しきれず体内に成分が残りやすいという問題もあります。しかも、それまでなんともなかったのに、突然症状が出て、急激に体調が悪化するケースが多いのです。

 たとえばある患者さんは、夏場に食欲不振を訴えて、急に意識がもうろうとなりました。救急車で病院に運ばれ、検査をしてみると血中のカルシウム濃度が異常に高くなっていることがわかった。

実はこの患者さんは、骨粗鬆症と診断されてビタミンDとカルシウム剤を飲んでいたのですが、知らない間に腎機能が低下していたために、これらの薬の中毒になっていたのです。そのうえ夏場の脱水が重なり、血中濃度が急上昇して限界点を超えたのでした。

 高齢者の場合、もう一つ考えていただきたいことがあります。それは、中高年のときに処方された薬を、そのまま同じ量で飲み続ける必要があるかということです。

高齢者の中には、降圧薬やコレステロール低下薬、血糖降下薬を何年も飲み続けている方がたくさんおられます。