人工知能は人間を超えるか

松尾 豊氏
 最先端の人工知能技術「ディープラーニング」をめぐり、いまグーグルやフェイスブックなどが数百億円規模の激しい投資・人材獲得合戦を繰り広げている。一方で、宇宙物理学者のスティーブン・ホーキング博士や、実業家のイーロン・マスク氏、ビル・ゲイツ氏などが「人工知能は人類を滅ぼすのではないか」との懸念を相次いで表明した。そのテクノロジーはヒトを超える存在を生み出すのか。人間の仕事を、人類の価値を奪うのか。

 うまくいけば、人工知能は急速に進展する。なぜなら「ディープラーニング」、あるいは「特徴表現学習」という領域が開拓されたからだ。これは、人工知能の「大きな飛躍の可能性」を示すものだ。もしかすると、数年から十数年のうちに、人工知能技術が世の中の多くの場所で使われ、大きな経済的インパクトをもたらすかもしれない。つまり、宝くじでいうと、大当たりしたら5億円が手に入るかもしれないということだ。

   ディープラーニングが新時代を切り開く

 2012年、人工知能研究の世界に衝撃が走った。世界的な画像認識のコンペティションで、東京大学、オックスフォード大学、独イェーナ大学、ゼロックスなど名だたる研究機関が開発した人工知能を抑えて、初参加のカナダのトロント大学が開発したSuper Visionが圧倒的な勝利を飾ったのだ。