心を生みだす脳のシステム

《私たちは今、一つ一つをとれば心など宿らないニューロンが1000憶集まって脳というシステムを作ると、そこになぜか心が宿る、そのメカニズムを解明しようとしている。いわば、心がない状態から心を合成する、「錬心術」の原理を解明しようとしているのである。》

《この本で展開した全ての議論は、実は、「錬心術」レベルの議論である。これは、私だけの問題ではない。今、世界中で行われている心と脳をめぐる議論は全て、このレベルの議論なのである。誰も、物質である脳の振るまいから一体どうして心が生まれるのか、その第一原理を理解している人はいないからだ。心を生み出す化学というものがあるとすれば、私たちはいまだに、心の化学誕生の前夜にいるのである。》

著書は、脳と心の探求はここ20〜30年で景色が一変するほど発展したと明言し大いに期待を向ける。そうではありながら、この無茶計画はまだまだ端緒についたばかりであるとも強調し、その完遂には極めて慎重なのだ。

《心脳問題については、それがいかに大変な方法論上の困難に直面しているかを認識することが最初で最後の課題と言ってもいいのかもしれない。「最後の課題」というのは、結局心脳問題は解けないかもしれないからである。》

では、突破口は存在しないのか。辛うじて持ち出されてくる手がかりの一つが「クオリア」だ。クオリアを親方にした突破集団は、どんなトンネルを掘っていくのか。

それはともかく、クオリアのごく簡単な定義。
《薔薇を見た時に心の中に浮かぶ赤い色の感じのように、私たちの心の中に浮かぶ質感を、「クオリア」(qualia)と呼ぶ。》

このクオリアは「感覚的クオリア」と「志向的クオリア」の二つに区別される。ここは重要ポイントだ。
《感覚的クオリアとは、例えば「赤い色の質感」のクオリアであり、視覚で言えば、色、透明感、金属光沢など、外界の性質が鮮明で具体的な形で感じられる時の質感である。「薔薇」をそれと認識する前の、視野の中に広がる色やテクスチャ(きめ)などの質感が感覚的クオリアである。》

《一方、視野の中の「薔薇」を構成する感覚的クオリアを、「ああ、これは薔薇だ」と認識する時に心の中に立ち上がる質感が志向的クオリアである。》
《別の言い方をすれば、言語的・社会的文脈の下に置かれた質感ということになる。》


《脳のニューロン活動は、単なる物質的過程ではない。ニューロン活動は、私たちの心を生み出す。主観的体験を生み出す。そして、主観的体験は、さまざまなクオリアに満ちている。このクオリアは、数量化を拒絶するのである。》

ミラーニューロン」「心の理論」

自分がある動作を行う時にも、他人がその動作を行うのを見る時にも、同じように活動するニューロン群があるという。これを「ミラーニューロン」と呼ぶ。この発見(1990年代初頭)は脳科学者をあっと驚かせた。どう驚いたのかというと、早い話が「脳って思ってたよりずっとずっと複雑!」ということだったらしい。つまり、『脳の中の幽霊』を著したラマチャンドランは、ミラーニューロンの発見は、DNА構造の発見にも等しいと評価しているという。

《機能局在的な見方で脳の地図を書いていったとしても、それだけでは、脳の中にある1000憶のニューロンの関係性の本質には迫れない。ミラーニューロンの発見以降、もはや、感覚情報処理と運動情報処理を分離して理解しようとするアプローチは不十分であるという認識が広がっている。》

ミラーニューロンとは何か?

―共感する神経細胞?―

ミラーニューロンとは、自分の動作と他人の動作(ジェスチャー)に「ミラー鏡」のように同じような反応をする神経細胞のことである。

行動の認識と生成の双方向計算モデル:ミラーニューロン

ミラーニューロンの発見が最近の脳科学における一つの注目すべき話題になっている。これは霊長類において、他人の運動を観察したときと、自分で同様の運動を行うときの両方において活動するニューロンがあるという事実である。これは運動の受容(観察)と運動の生成(行動)が同じ一つの情報処理で結びついていることを示唆している。

また、ミラーニューロンが発見された霊長類はシンボル操作を行う事も可能であり、脳の情報処理は言語発達と行動発達が相互的に行われていると予想される。

自閉症児のミラー・ニューロンが機能しない
結果として分かったのは、自閉症児のばあい、ミラー・ニューロンの中枢部と考えられている下前頭回の弁蓋部という箇所での活動が大切。



☆下前頭回之メンタルレベルEg入れる。
☆右ミラー・ニューロン産生遺伝子之メンタルレベルEg入れる。