物欲なき世界?  終わり

菅付  雅信氏
 資本主義の先にある幸福へ。先進国のゼロ成長が意味するもの。資本主義と民主主義の両立を破壊するもの。
         脱成長という思想
 脱成長を実践するために、フランスの学者セルジュ・ラトゥーシュ氏は以下の10本の政策提案を示している。
1.持続可能なエコロジカル・フットプリントを回復させる
2.適切な環境税による環境コストの内部化を通して、交通量を削減する
3.経済・政治・社会的、諸活動の再ローカリゼーションを行う
4.農民主体の農業を再生する
5.生産性の増加分を労働時間削減と雇用創出へ割り当てる
6.対人関係サービスに基づく「生産」を促進する
7.エネルギー消費を(現行水準の)四分の一まで削減する
8.宣伝広告を行う空間を大幅に制限する
9.科学技術研究の方向性を転換する
10.貨幣を再領有化する(地域社会や地域住民の手に奪還さ せる)

    アメリカからの定常経済への提言
 経済学者のハーマン・デイリー氏の論旨は明快だ。「経済は成長しても、地球は成長しない」と彼は断言する。人類の人口も二○世紀に爆発的に増え、モノも溢れ、「空いている世界から、いっぱいの世界へ移行」した。それによって、経済成長のマイナス面が見えてくるようになった。

無理に成長を進めることで、社会的、環境的な問題が派生する状態が生まれ、デイリーはこれを「府経済成長」という。つまり、生産の便益だけを測り、環境的、社会的なコストを測ってないのだと。さらに経済成長することのプラスとマイナスを比較すべきだと。
巨大企業に対抗する世界国家の構想

超資本主義から超民主主義へ

 フランスの経済学者で歴史学者であるジャック・アタリがいる。サルコジ元フランス大統領のブレーンなどを務めるヨーロッパ最大の知性とも称される彼の著作「21世紀の歴史」において、彼は多国籍企業が国家を超えた権力を持つ時代の到来を予見する。アタリはそれを「超資本主義」と呼ぶ。学校も警察も軍隊も一部、または全面的に民営化され、国家が関与する領域が限りなく小さくなる世界が来るという。

 デイリーもここ日本の停滞ぶりに関して、逆にポジティヴな見方をする。日本は成長の限界に適応しており、低成長状態は成長経済の失敗なのではなく、定常経済の成功と見なせるのではと。「日本は成長の限界にうまく適応することに関して、世界の先頭に立っているのです」。