ドイツの「第4次産業革命」

「世界が直面している問題を工場が解決する」といったら、大げさだと思うだろうか。この壮大なコンセプトを本気で実現しようとしている国がある。ドイツだ。現在、ドイツ政府は「Industry(インダストリー) 4.0」と称する高度技術戦略を掲げ、産官学一体のプロジェクトを推進している。
 そのコンセプトを一言で表すと、「つながる工場」である。インターネットなどの通信ネットワークを介して工場内外のモノやサービスと連携することで、今までにない価値を生み出したり、新しいビジネスモデルを構築したりできる。ひいては、それがさまざまな社会問題の解決に結び付くというのだ。
IT活用がカギ握る
 Industry4.0の大まかなコンセプトは、2011年にドイツで開催された産業機器の展示会「Hannover Messe2011」で明らかにされた。そして、2年後の「Hannover Messe2013」では、産官学の有識者から成るワーキンググループ(WG)による最終報告が発表された(ドイツ語版と英語版がある)。以下では、この最終報告に沿ってIndustry4.0の中身をひも解いていく。
 Industry4.0という名称には、人類の長い歴史における「第4次産業革命」という意味が込められている。第1次は、18世紀から19世紀にかけて起きた、水力や蒸気機関による工場の機械化。第2次は、19世紀後半に進んだ電力の活用。第3次は、20世紀後半に生まれた「プログラマブル・ロジック・コントローラ(PLC)」(工場などで自動制御に使われる装置)による生産工程の自動化だ。Industry4.0は、これらに比肩する技術革新として位置付けているのだ。
エネルギー消費の問題を解決
 工場のスマート化が進むことによって、従来にないモノを造ったり効率を大幅に高めたりするだけではなく、現代社会が抱えているさまざまな問題を解決できるという。
 例えば、エネルギー消費の問題だ。現在は、工場が操業していない時間帯でも、すぐに操業を再開できる状態にするために多くのエネルギーを消費している。だが、工場の操業度に応じてエネルギーの供給をリアルタイムで調整できるようになれば、トータルのエネルギー消費量を大幅に減らせる。