あなたの体は9割が細菌?
アランナ・コリン氏
フーチ  90%
 人体には、内側にも外側にも多様な「棲息地」がある。地球上のあらゆる生態系で動植物のさまざまな種が共存しているのと同様、人体にも多様な種が共存する微生物生態系が存在する。人体は、つきつめれば一本のチューブのようなものだ。食べ物はチューブの一方の端から入ってもう一方の端から出ていく。

 私たちの皮膚を「外側」の面だと思っているが、チューブの内壁もまた外界に接した「外側」の面だ。皮膚細胞が天候や有害物質、侵入を試みる微生物から私たちを守っているように、人体を貫く消化管の細胞も私たちを守っている。私たちにとって真の「内部」は、皮膚と消化管にはさまれた組織や器官、筋肉や骨の部分だ。

抗生物質が微生物集団の構成を変える

 抗生物質が家畜の体重を増やすことはさておき、抗生物質がヒトの体重を増やすことは一九五○年代から知られていた。当時は肥満がまだそれほど流行しておらず、抗生物質はヒトの成長を促進する目的で使われていた。家畜を成長させるという抗生物質の効用に気づいた一部の医者が、早産で栄養不足の赤ん坊に抗生物質を与えることを試みた。効果てきめんで、いつ死んでもおかしくなかった赤ん坊の体重がみるみる増えた。しかし、太りすぎのひとがあふれかえっている現在の状況から見ると、この試験結果はむしろ警鐘ととらえるべきだったかもしれない。