健脚寿命を保つ鍵は、ヒザより腰より

「股関節」にあ!る
       「足音」を気にしてみる
 とりわけ重要となるのが「歩き方」だ。石部氏によれば、股関節にかかる負荷は、立っている時で体重の0.6〜1倍程度だが、歩行時は3〜4.5倍にもなる。それだけに、正しい「歩き方」か否かは大きな違いとなる。
「まずNGなのは『すり足歩行』です。股関節や膝に痛みがあったり、脚の筋力が衰えているお年寄りに多い歩き方ですが、脚全体で着地の衝撃を吸収することができません。つまずいて転倒する危険性も高まってしまいます」。
 靴を履いて歩く時に、ズルズルと足音がする場合、注意すべき兆候といえる。歳を重ねて歩く時の姿勢が猫背や前傾気味になっている場合も気をつける必要がある。
「腰に負担がずっしりとかかり、股関節にも大きな負荷になる。無駄なエネルギーを使うことにもなり、歩いていて疲れも溜まりやすくなります」。
 前述した「変形性股関節症」が進行した場合のサインとして、『肩が水平でない』ことも挙げられる。
「片方の股関節が悪くなって痛みが出ると、使うのを避けるようになり、その股関節周囲の筋力が低下する。とくに中殿筋という股関節の外側の筋肉がやせてくると、バランスをとるために片側の肩だけが下がる歩き方になる」。

 靴底の減り方が左右で大きく違うようなら要注意だ。そうした歩き方の歪みは股関節への負担として蓄積されていくのだ。石部氏は理想的な歩き方を「グッド歩行」と名付け、その実践を呼びかけている。最大のポイントは『着地はかかとから』を心がけることだという。

 足のかかとから着地したら、足裏全体を地面につけ、重心を徐々につま先に移動させるというシンプルな原則だが、加齢とともに当たり前だったはずの歩き方が少しずつできなくなっている。その改善が必要だ。

「踏み出しと着地の際の衝撃を、足首や膝の関節でバランスよく吸収できるようになります。また、背筋が伸びていなければ、かかとから着地できないので、自然と猫背が解消される。歩幅は踏み出した足のかかとと、もう片方の足のつま先の間が7〜8cm程度となっているかをチェックしてください。やや狭いように思えるかもしれませんが、大きすぎるとかかとから着地できなくなります」。

 単に股関節への負荷が軽減されるだけではない。「グッド歩行を実践すると、長い距離を歩いても疲れにくくなる」というから、健康長寿につながる適度な運動量の確保も可能となる。股関節のケアが様々な疾病の予防にもつながってくるのだ。