50年前の日本は「放射能まもれ」だった
〔47都道府県完全調査〕それでも「がん」「奇形児」「知能低下」は増えていない
原発事故による放射能被害は、もちろん深刻な問題である。被曝した住民らに何ら落ち度がないのだから、どんな小さな被害にも政府・東電は誠実に対応すべきだ。
ただし、問題が深刻であることと、「被害が深刻」なことは別だ。
ここに公開するのは、日本で明らかにされたことのない全く新しいデータである。
放射能が安全なわけではないが、不可抗力で被曝しながら生きてきたのは現在の福島県民だけではない。すべての日本人が今より大量の被曝を、すでにしているのである。
例えばある記事では「スーパー」の基準は「0・6マイクロシーベルト/時」を超える場所だそうだ。
これは年間では約5・2ミリシーベルトに相当するのだが、これがどの程度の被曝か他の例と比較すると、「スーパー」がいかにも大袈裟な表現だとわかる。
➀自然放射能
世界平均は2・4ミリシーベルト/年(以下、単位は同じ)。アメリカ、ブラジル、インド、中国などでは、この値が5〜10の地域に多くの人が住んでおり、健康被害は全くない。
?宇宙線
世界平均で0・38だが、高度が1500メートル上がるごとに2倍になる。
?温泉
がんの温浴治療で有名な秋田県の玉川温泉の源泉近くでは10〜100(街中ではその10分の1程度)。放射能泉の元であるラジウムの濃度でいうと、この玉川の数十〜数百倍とされる温泉が日本各地にあり、観光客で賑わっている。
?医療放射線
日本人の平均で2・3。人間ドックでCTやバリウム検査を受ける人はさらに高く、この数倍に達する人も珍しくない。
――と見れば、煽り派がいう「スーパー」な被曝がどの程度かわかるはずだ。
核実験2000回のツケ
考えてみれば当然だ。1945年にアメリカが初めて大気圏核実験を実施(マンハッタン計画)して以降、主に米ソによる核開発競争は激化の一途を辿り、大気圏と地下を合わせた実験回数は62年には史上最多の年間178回に達した。
すでに原発事故以上に被曝
しかし、日本の大半の地域では、60年代の被曝量は現在よりずっと高かった。しかも、そうした高濃度の汚染は、少しずつ低下しながら数十年にわたって続いたのである。
グラフを見てもらえばわかるように、チェルノブイリ事故でフォールアウトは急増したものの、翌年には影響は消えた。年間数十回もの核実験で次から次へと放射性物質が大気中に放出された悲劇と、1回の原発事故の影響がいかに異なるかをはっきり示している。
そして最も重大な事実は、今年の値を含め、人工物による被曝量は、第1章で述べた自然放射線や宇宙線などによる被曝と同等か、ずっと少ないということだ。
しかも核実験によるフォールアウトでは、プルトニウムやストロンチウムなど、現代の「煽り派」が、“これが漏れたらおしまいだ。”
「彼らは健康被害がないと困る。研究費がもらえなくなりますからね。
国際機関の研究費援助に頼っている割合が高い研究者ほど、チェルノブイリの被害を過大に報告する傾向があるようだ」と明かす。